Letter 2
?/11/2013 Nàpoli
僕がマウラとソレントに行くのを諦めた時のことだけど、その日はポンペイからローマへ戻るしかなかった。ソレントは僕達にはお高い町だったし、ナポリのドミトリーなんて危なっかしくて探す事も出来なかったから。夜になるまでに僕達はそこを離れなくてはいけなかった。線路の暗がりから不幸がやって来ると困るからね。でもそのまま帰ってしまうのは味気ないからと、僕達は途中から電車を降りて海沿いの道を歩いたんだ。ナポリへ向かう途中に小さなお城があって、僕がそこに行きたいと話したら、歩いて行くならかまわないとマウラが言ったから。11月だというのにひどく暑い年だった。夏のように。海辺では水着姿の女性達が岸壁のあちらこちらで陽射しを浴びていて、その傍の男達が時々大きなシーツの様に彼女達を包んだり、顔を隠したりした。僕等はその愛を抱いた大きなシーツの化け物を眺めながら、西へ向かって歩いていた。「あなたも泳いだら良いのに」とマウラが言うから「海に入るとお城に入れないよ」と僕は言った。あの時、彼女に冗談の一つでも言えたら良かったよ。想い出の多くが、正午の海辺で満たされるとわかっていたらなおさらだ。
