僕がよく過ごしたBARの扉を開けた時、一人の女性がわずかな時間を過ごし終わっていた。
僕が席に着いてからも、その女性はまだコートを羽織っている途中で、何度か僕と目が合った。
少し微笑んでいる様子だったので、何か良い事や面白い事があったのかと思った。
バーテンダーに見送られ、見届けたバーテンダーが扉を閉めた。
居るべき場所に戻ったバーテンダーも少し微笑んでいた。
「ロブロイさん、今さっきお帰りになった方わかりますか?」
「今居た女の人?」
「そうです」
「初めて会ったけれど、何か少し笑っているみたいだった。面白い事があったのかなって思ったよ」
「あの人、占い師さんなんです。良く当たるそうですよ」
「占い師さんか。すごいね。僕は占いとかやってもらったことないから、今度は僕も見てもらおうかな。何が見えるのかな」
「色々見えるそうです。私もお願いしようと思いました。残念なことに今はお願いできないので、また違う機会に。ちなみにロブロイさんの事は帰り際に話していましたよ。少し驚かれたみたいです」
「え?だから笑っていたのか」
「すみません。私も少し笑ってしまいました。帰り際にロブロイさんのこと珍しそうに『あの子、ずいぶん子供ね』って」
「う。ひどいな。僕はもう27だよ。それに若く見られるけど、子供って」
「でも、当たってますよね?」
「まあいいよ。あ、僕の色とかあるのかな?イメージというかその人の雰囲気みたいな。この人はこんな色とかって」
「……難しいですね。私は占い師じゃないけれど、けっこう皆さんイメージの色ってあるんですが。ロブロイさんの色か」
「難しい?」
「難しいですね……んー、無い」
「無いの!?えー……僕の色は無いのか」
「いやいや。悪い意味じゃないんですよ」
「じゃ、なんで」
「だってロブロイさん、何色にもなれちゃいそうですから」
さて、
そろそろ何色か分かる頃合いかな。
