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LobLoy's diary

現実日記・妄想日記・夢日記

口角の記憶

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口角の記憶

そのスーパーマーケットのフードコーナーにはそれほど魅力を感じなかった。誰も僕を頼ることなんてない。僕には退屈な場所だった。

誰かが化粧品を買う為に、口紅やら顔の表面を整えるそれらについて、多くの時間が費やされる時に僕は椅子を探してしまう。その時と同じだ。

僕には良いトマトを選ぶ時に、それがどれほど良いトマトかわからない。

誰かの目の動きに沿って、口紅の番号を追いながら、どの色が素敵かなんて僕にはわからない時の様だった。

僕は「先に帰りたい」と話す。彼女は「かまわない」と言うので、僕は緑や赤が白い光に照らされたその場所から立ち去る。

生暖かい外気と仲良くしながら、長い坂道を上る。坂道を歩きながら想い出を掘り起こす。

「何か残るものがあったのではないかな」と頭の中で過る幾つかについて考えようとしたら、彼女は僕に追いつく。

彼女は両の手で箱を持っている。

箱の中に腕時計が沢山詰めてあって、お気に入りを僕に選ばせる。

そのお気に入りは、彼女が僕に残しておきたかったものだと教えられる。僕の為に残されたかもしれない腕時計を一つ選ぶ。けれど、選んだお気に入りは直ぐに箱から消えてしまう。僕はその後も腕時計を探し続けるけれど、見つけることはできない。

夏の出来事だ。鐔の長い帽子から生まれた影は、紅い唇の少し上で休んでいる。






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