Letter 6
何が言いたいかって言うとさ、考えてみたのだけど、僕はこのままじゃ駄目だと思うんだ。これでもかってくらい今は生きやすくて仕方がないんだから。何にも困らないしね。僕だけのことなら守るものや賭けるものもない。一人でいる事はあまりにも自由で、気楽で、苦労がないよ。だから、こんなのってない。こんな人生ってないよ。誰でもできちゃうんだから。誰かと一緒になら当り前の時間に苦労するはずなんだ。誰かと生きていくのはきっと大変だよね。でも、そんな苦労をしていない僕にはさ、その分の人としての器や大きさが無いと思うんだ。誰かに薔薇を渡すこともない。このまま生きたら、一生無いままに向こうへ行ってしまう。本当に気楽過ぎるじゃないか。そんな気楽な人生ってないよ。僕はそんなの絶対にいやなんだ。だからね、それを君に伝えておかなきゃって思ったんだ。僕が今そう思う事を君に知らせて、君が元通りの僕を見掛けたら「そうじゃないだろう」って僕に教えて欲しいんだよ。君には面倒なお願いだろうけどさ。でも仕方がないよ。一人っきりのこんな真昼間なんてそうはないんだから。許してほしいな。こんな晴れた日には一人でいちゃいけなかった。わかりきったことなんだけどね。真昼間は何でも気付かせようとするから相変わらず好きにはなれないよ。ずっとこればっかりは。でもさ、これから巡る時間と相談したって、僕はもうこんな話を君にすることないって思うんだ。まだ時間はたっぷりあるんだから。君が懐かしく思えるくらいにね。もう何も気にならないくらいに、僕は変えてしまいたいんだよ。挨拶を交わすその場所を。その道沿いに並ぶベンチシートを。しつこい電線を。寂しい木々を。何かを揺らす風やらを。まだまだ時間はあるだろうから。その時が夜となれば、それすらも変えてしまうよ。僕と誰かのために。
P.S
朝には、朝の綴りがある。
夜には、夜の綴りがある。
真昼間には、真昼間の。
