「ん?ロブロイさん、外にも出られるよ?」
「え!!露天風呂が良い!!」
露天風呂へと急いで向かう。
そこは山間の温泉。
木々に囲われ、
鳥達が石壁の上でオブジェの真似事をする。
少し離れた所にそれを羨む鹿がじっとこちらを見つめている。
僕らはそこにいる生き物の一種になる。
僕の隣には小肥りの猿がいる。
きっとその猿は、僕なんかよりずっと長いこと生きてきたはずだ。
猿の視線の先を追う。
僕達より遥かに長いことそこにいた緑があるのに気づかせてくれ……
というような事を、12秒くらい妄想した後に扉を開けると真っ暗だった。
景色には山の輪郭すら居なかった。
少しがっかりしてしまう。
21時前。夜なのだから当たり前だけど。
「真昼間が一番気持ち良いんだけどね」と、Cさんが少し残念そうに言う。
「あ、うん……仕方ないですね。夜だから。でも、良いんです。夜も良いもんです。僕は空を見る癖があるから」
「ああ!そうですね。星を見ながらってのも悪くない」とCさんが笑顔で言う。
仕事は終わり。
ここはお風呂。
どうでも良い事を話しましょう。
月も見えない空は、
星がうるさくて良いもんです。
