その高架下には一度も訪れたことがなかった。
僕の車は柔らかな鉄で出来ているから「もしもの時」はひとたまりも無いなって思った。それがとても恐くて車の中に隠れるしかないのだけれど「もしもの時」がやってくるのは案外早かった。フロントガラスの先で銃を手にした「もしもの時」は僕をずっと待ち侘びていた。弾丸は柔らかい車と僕を突き抜けた。穴の空いた身体は酷く苦しい。憂鬱さも傍から離れなかった。僕は僕の大事に想う人へ「もしもの時」を知らせなければいけないと思った。その人達に「もしもの時」が近づかない様に。出来るだけ遠くへ逃がさなきゃいけない。守りたいものが幾つかあった。それに気が付いて泣いた男の話だった。
P.S.
チリのどこかで月を作った男がいた。
羨ましくて仕方なかったから、僕も月を作った。
deafheven / sunbather
